【07.10.28開催 第5回介護セミナー166名で大成功】

記念講演:三つ葉在宅クリニック 舩木良真氏 166名で大成功

「ありがとう、愛知県医労連との出会いで、励ましをもらいました。」

◇学習講演会と施設・事業種別「5分科会」で、実践交流。
◇組合のない介護施設・事業所61カ所から参加
舩木医師の講演

会場はいっぱいの参加
第5回目になる「介護セミナー」を10/28(日)金山労働会館で開催しました。これまでと同様に、2/3が組合のない職場からの参加。加盟組合からは11組合、組合のない施設や事業所61施設からも多数の参加があり計166名もの多数参加で大成功しました。

永田事務局長 
◆ セミナー概要
 全体会の概要は、西尾書記次長が司会進行。はじめに主催者を代表し永田介護部会・事務局長(なごや福祉施設協会労組)が「私達が利用者のためたたかう前に、山のような書類作成と過酷な労働で疲れ果てる毎日。だから希望を持てる講演会を開催した。元気になれるセミナーでお互いエネルギーを共有できたら嬉しい」とあいさつ。
 
 

中島部会長
 記念講演につづいて、中島恵子介護部会長(みなと医療生協・ケアマネージャー)から介護をめぐる情勢と運動方向の「問題提起」。午後からは、実践交流会、そして全体会ではそれぞれの分科会の報告と、原書記長が「まとめ」を行いました。 (1)講演会の介護の三方よし(働き手よし、利用者、地域よし)には、介護制度や報酬改善が欠かせない、来年春に予定する県交渉へ現場からの要望を集めよう (2)介護保険の矛盾は、みんなが力を合わせれば改善できる。医労連に加盟する仲間と一緒に運動しよう、ぜひ加入をして運動して欲しい (3)介護セミナーは、医労連の組合の仲間が準備した、今後一緒に作る取り組みを」と運動への参加を強調して、締めくくりました。

舩木先生からは「みんながハッピーになれるシステムを」

 舩木医師
◆ 記念講演は、高齢社会の到来の中で、在宅医療の重要性が語られる。
  キーワードは、「介護の三方よし(さんぽう よし)」をめざそう!
 
 午前の講演会は、「三つ葉在宅クリニック・舩木良真医師)」による「人生を生かす医療と介護」と題して行われました。
 舩木医師は、始めに近江商人の三方よし(売り手よし・買い手よし・世間よし)になぞって「介護も働き手よし・利用者よし・雇用増え地域よし」で「みんながハッピーになれるシステムでないとダメだ」とした上で、厚生労働省・人口統計を駆使して日本の将来像を語りながら、「東欧諸国では地域医療をまず、しっかり育てて、病院の在院日数を減らしたが、日本では無理矢理、在院日数を減らして医療・介護難民を作る方向で順序が逆さま」と批判。同時に「地域医療の整備」が重要としました。

資料1 2015年の高齢社会像(講演資料から)
 (1) 認知症が増える(2005年 150万人→2015年 250万人(100万人増、1.6倍化)
 (2) 一人暮らし高齢者が増える(→2015年 570万世帯 1.5倍化)
 (3) 亡くなる高齢者が増える(→2015年 1年に140万人が亡くなる)
 (4) 都市も高齢者が増える

 資料2 愛知県は全国で4位の高齢化県(講演資料から)
     2002年    2015年         増加人口
     高齢者人口       高齢者人口     増加率
 全国  2363万人(人口比18.5%) 3277万人(人口比26.0%) 914万人(38.7%)
 愛知県  112万人(人口比15.7%) 172万人(人口比23.9%) 60万人(54.0%)

 参加者の様子
◆地域医療と介護は、インフラ。地域医療がもっと育つ社会的な保障と、人材育成が必要。

 そして、国民から求められる地域医療の姿を「水道哲学」と題して、医療を「水道」に例えて「医療はインフラ。まずは、美味しいお水でなくても上水道を地域に張り巡らす必要があり。そして、それは(1)いつでも、必要な時すぐに (2)患者さん本意で (3)医療だけでなく患者さんに関わるスタッフ全てが連携をとって安心の体制を作ることが必要」。医師が水道なら、電気は看護師、ケアマネはガス・・・一人の人が生きる上で、どれも欠かせないし、連携がとれなていなければ生活できない(しにくいもの)」と、参加者からも「こんな医師がいるクリニックが近くにあったら、誰もがきっと安心して暮らせる」「いままでの在宅医療の意義と役割がしっかり話されてスッキリした。「将来の社会の姿と在宅医療の必要性の話がとても新鮮で感動しました」と多数が感想を述べる講演会になりました。

◆ 価値観は変わった。利用者本意の意志決定を、在宅チームが、どうサポートするかが、これからは大事

 さらに、この間の社会的な価値観の変化、についても触れ、従来型の「生命重視・社会的価値観・治療優先・先進的で専門的な医療重視」から、「生活重視・個人的価値観・支援・標準的医療」に変わってきていると指摘。医療は治療優先のため、医師や医療スタッフの一方通行になりがちだが、医療も、介護も、患者・利用者が。「どう生きたいか」「何を選択したいか」について、「患者、本人がよりよい意志決定ができるようサポートすることが一番大切な役割」としました。
 それを保障するには、(1)情報の共有 (2)常に良い方法を考える (3)ケースに応じた考え方の知識を持つ (4)患者・利用者に関わる全てのスタッフがやる気で、やり切る構えをどう作るか が大切。
 そして講演の最後に、感情のコントロールを大切にすることが話され「介護労働は感情労働」として患者・利用者に接する場合の私達の心得の側面と、「ストレスマネージメント」として、ストレスとの上手なつきあい方を紹介。「ぜひ、熱い情熱をいつまでも持ち続けながら、頑張りすぎ、燃えつきはダメ。前向き思考で頑張ってください」と、過酷な労働や医療、介護保険制度の矛盾のなかで、患者・利用者への寄り良いサービス提供に悩む私達を、暖かく励まされました。

施設・事業種別「5分科会=実践交流会」の概要報告

 分科会にも参加舩木医師
「良い仕事がしたい!」「他では、どんな実践をしているか知りたい」

 午後は、各事業種ごとに5つの分科会((1)療養型病棟、(2)老健・特養ホーム (3)グループホーム (4)デイサービス (5)訪問看護)に分かれ、各施設毎の賃金や労働をめぐる違法状態の解消策やよいよい介護業をどうしているか、業務上の悩みや工夫が語られました。
 参加者からは「他の施設と交流でき、同じ悩みや一緒の気持ちなんだということが分かって仲間意識がもてた」「こういう取り組みをもっと開いてほしい」など、セミナーの成功を裏付ける感想も多数寄せられました・

各施設・事業種ごとの分科会の模様

 療養型
(1)療養型病棟
 療養型廃止の政府の誘導によって報酬ダウンや制度改悪から社会的な運動が巻き起こっている中で、日本医労連の緊急調査や廃止反対運動の方針紹介も含めて問題提起がされました。実態交流では、抑制しない運営の工夫では、参加したある病院からは、「医療型の場合はやむを得ない場合に抑制できるが、介護型の場合には監査が厳しく減算された」との経験が出されました。看護と介護のチームづくりでは、看護も介護もカルテを書く、介護のチームも平等になっている等が出されました。
 転倒や車いすからの転落防止では、畳の部屋を作っている等の工夫も・・・。共通する悩みは、人作り。新人教育、院内保育所があっても、2年で辞める。大切なのは、ゆとり、そして良かったことの共有。しかし、どこも介護福祉士の求人には困っており「限りなくゼロに近い」等が出されました。

 老健・特養
(2)老健施設・特別養護老人ホーム
 老健は当初は在宅復帰を目的とした「中間施設」の位置づけから出発しましたが、特養待ちの利用者が溢れる中、一方で、医療度の濃厚な利用者もあり、看護師の配置基準が入所者100床に対し看護師8名程度のため、夜間体制が手薄で、急変対応の遅れ、の訴えが後を絶ちません。
 また特養は、在宅介護が難しい利用者が入所する施設で医療がない方を対象と言われていますが、利用者の重度化が進み、中でも認知症や(写真 事業種別実践交流会・老健・特養) 医療依存度が高い方傾向が目立つという2つの施設共に人手不足と、残業でクタクタとの実態が出されました。2006(平成18)年度の介護報酬改定で看取り加算や重度化加算、夜間看護体制加算といった医療的支援が設定されましたが「実際には報酬を算定できない」「ここ数年の看護、介護職の離職の影響で、職員が育たない、疲弊し燃え尽きている、介護の質の維持がままならない」といった状態が出され、事故や健康障害、介護職員のモチベーションに影響する問題点が出されました。

 デイサービス
(3)デイサービス
 前回と同様に、悩みもたくさんでましたが、レクの内容や工夫を中心に、他のデイはどうしてるの?と質問も飛び交い充実した分科会でした。まずは、この間、制度改悪による負担増で、利用者確保、経営面も大変な実態が出され、名古屋市内では食事代も法人負担で無料体験は当たり前、との状況やその日の開始時間が全員そろわないと減算、という厳しい改訂で「お迎え時間を早くしたが、お年寄りによっては朝の突然のハプニングで結局、事業所到着が遅れたり、そんな時にも減算なんてたまらない」また、レクのあり方でも、人手がないなかで一律の集団対応に規制がかかり、個々の対応でないと減算されるので「外出を以前より減らした」、厚生労働省は「お昼寝」「床屋さんの時間も算定時間から外すの一律対応でおかしい」等がでました。

 グループホーム
(4)グループホーム
 終の棲家(ついの すみか)として、とにかくアットホームなサービスを心がけているのが共通でした。料理や買い物は、もちろん入浴も毎日になるように。そして、1年に1回くらいは旅行も、と努力を重ねているとの報告が続きました。今回参加の事業所のなかには利用者24人に対し常勤17人配置。日勤で常勤4人というビックリする施設もありました。しかし、経営者が無償になっている等、いまの制度の限界も感じられる報告があり、参加者双方で名刺交換し「お互いに見学し合いたいね」と話も弾みました。
 国や自治体への要望では、スプリンクラー設置義務は必要だが400万も500万もかかる、低報酬なのに全部施設負担では「やってゆけない」との意見がでました

 訪問看護
(5)訪問看護
 今回の記念講演もあって最も参加者が多かったのが特徴です。講師の舩木医師も時間を割いて訪問看護分科会にも参加を頂きました。講演会の内容に対して、感想や悩みも出されました。特に、「(社会的な)価値観の変化」と「患者の意志決定の重要性」については、看護師が訪問し個別患者に対しベストを尽くそうとする場合に最も悩む点について。「例えば、胃ろうを作るかどうか、患者に聞けばみんながそれはイヤだという。家族に聞けば、半分は作って欲しいという。ところが看護師に聞くとみんなが作った方が良いという。」と実践面からアドバイス。「適格な情報提供とコミュニケーションは必要だけれど、最終的に決めるのは、患者さん」と。それを聞いて「ふだんの悩みやモヤモヤが、スッキリしました」等、感想が寄せられました。

<セミナーに参加の組合組織及び「施設・事業種別」施設数>

分科会名      組合名   その他の事業所数 合計
療養型病棟     4組合    2施設・病院  6施設・病院(昨年8施設)
老健・特養     3組合    5施設     8施設(昨年14施設)
グループホーム   0組合    7事業所    7事業所(昨年11施設)
デイサービス    3組合    5事業所    8事業所(昨年10施設)
訪問看護      3組合    8事業所   11事業所(昨年ヘルパー6施設)

◆ 「こんな会なら、また参加したいです」「情報を送って下さい」と。
何と40人!もの介護労働者と新しい、ネットワークが広がる・・
会場で「医労連に加入します」と3施設・3名が個人加盟組合に加入

  回収された120枚のアンケートには、「また、参加したい」「また、参加したいです」「今後も案内を送って欲しい」と氏名や住所・連絡先を書いた方は40人あり、新しい介護のネットワークが広がりました。当日会場で訴えた署名は181筆集約(大幅増員86筆、後記高齢者保険中止95筆)されました。

参加組合及びセミナー運営にご協力頂いた組合のみなさん、ありがとうございました。

公開:2007年11月1日   カテゴリー: